あの人は数年飲み続けていた抗うつ剤と
長年1日3箱も吸っていたタバコを同時に辞め
ガムを噛むようになっていた
(抗うつ剤の禁断症状でタバコの禁断症状を誤魔化す
 とか変な理由をつけていたと思うが…)

あの人が嫌いだった歯医者に何年も通って
治療が終わったのはその少し前
-歯医者-


そしてあの人が突然家を買うと言い出したのは
蕎麦の食べ歩きをした翌年の事だった

「自分の誕生日プレゼントに家を買う」と言い
ほんの3~4軒、外から中古物件を見ただけで
たった2日でマイホーム購入を決めてしまった

不動産屋から届いたFAXを手に
家を見に行った時の事を覚えている

住所を頼りになんとか見つけた家を
私たちが門扉越しに眺めていると
家の中から男性が声を掛けてくれた

一人暮らしの初老の男性は脳梗塞で半身が麻痺しており
車がないと不便な家を早く処分して
知人の家に近い便利なところに引っ越したいと言っていた
そして、私たちにこの家を買って欲しいと

契約だの住宅ローンだのの手続きを経て
それでも不動産屋さんが言うには
かなり早い速度で話が進み
めでたく誕生日から1ヶ月ちょっと
7月末に最終契約と家の引き渡しとなった

そう言えば家の中を見たのは最終契約の前日だった
前の持ち主さんが住んでいらした事もあるが
あの人も私も
楽しみはあとにとっておくのも悪くないと思っていた

たとえ家の中がどんなに荒れていたとしても
二人とも初老の男性と話をした時から
この家に住もうと決めていたのだと思う




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半年近く綴ってきた想い出も
残すところ、この家で過ごした4年間と
小中学校の生い立ちのみとなった

記憶が近づいたからなのか
残る想い出が少なくなったからなのか
最近また涙が流れることが多い

あと少し
22日までになんとか書き終えたい
今度の別れは自分で決めたのだから…

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