| Home |
2010.11.14
天使と悪魔
あの人は優しかったから知り合いの漫画家さんに
出版社を紹介するなどの親切は日常茶飯事だったが
あの人の常識では考えられない親切エピソードを思い出した
1年くらい前に、たまたまネットで見かけて
お気に入りだった漫画家さんのブログで「ペン先が買えない」という
記事を読んだらしく、それまでコメントすらしていなかったのに
突然住所を聞いてペン先を箱で送った
ブログで喜んで貰えたのが嬉しかったらしく
その後も原稿用紙を宅急便で送っていた
でもまだ、それは序の口で
一番驚いたのは十年以上前の事だが
まだ原稿を手書きしていた頃、閉め切りギリギリであげて
直接宅急便の支店に持ち込んでいたのだが
それでも間に合わないと深夜車を飛ばし
宅急便の仕分け所に直接持ち込んでいた
それにも間に合わないと翌朝新幹線で東京の出版社まで持っていった
その新幹線での出来事
寝不足で疲れていたので指定席に乗車していたあの人は
車掌の激しい声で目を覚ましたと言う
声の方を見ると
激しく怒鳴る車掌に年老いた老婆が東北なまりで何度も謝っていて
老婆の横には幼い女の子が今にも泣きそうな不安な顔で寄り添っていた
話の内容は老婆が指定席と知らずに座っていたから差額料金を払え
払えなければ到着後保安室に連行するというもの
老婆は駅に着いたら娘が迎えに来てるから娘に払ってもらうと説明したが
若い車掌は今払えなければ連行すると譲らない
見かねたあの人は若い車掌に言った
「あんたのお母さんがもしこんな風に困っていても、今と同じ事が言えるのか」と
それでも若い車掌は譲らない
あの人は「差額料金はいくらだ、払えばいいんだろ」と払ったそうだ
車掌は気まずそうに受け取りその場を去った
老婆は東北なまりで「ありがとうございました。
駅に着いたら娘が迎えに来てるのでお金を返します」と言ったそうだが
程なく終点の駅に着き、あの人は「好きでやった事だから気にしないでくれ」と言って
老婆に追いつかれぬよう足早に立ち去ったと言う
あの人の正義感(親切心)は目的を遂げるとそれで終了する
私もその日に聞いて以来忘れていたので
たぶん、あの人はこのことを忘れていたと思う
私の前で見せるあの人の顔はいつも天使(神様)のようだったが
出会った頃のあの人との会話では度々冷酷な悪魔の顔を覗かせていた
あの人の言った悪魔の言葉
「遊んで一番面白いのは人の心だよ」
私と出会ったのは、いくつもの裏切りが重なって
人を信じられなくなっていた時期だった
私に対しては初めから優しかったあの人が
私を心から信じてくれたのはいつからだったんだろう
出版社を紹介するなどの親切は日常茶飯事だったが
あの人の常識では考えられない親切エピソードを思い出した
1年くらい前に、たまたまネットで見かけて
お気に入りだった漫画家さんのブログで「ペン先が買えない」という
記事を読んだらしく、それまでコメントすらしていなかったのに
突然住所を聞いてペン先を箱で送った
ブログで喜んで貰えたのが嬉しかったらしく
その後も原稿用紙を宅急便で送っていた
でもまだ、それは序の口で
一番驚いたのは十年以上前の事だが
まだ原稿を手書きしていた頃、閉め切りギリギリであげて
直接宅急便の支店に持ち込んでいたのだが
それでも間に合わないと深夜車を飛ばし
宅急便の仕分け所に直接持ち込んでいた
それにも間に合わないと翌朝新幹線で東京の出版社まで持っていった
その新幹線での出来事
寝不足で疲れていたので指定席に乗車していたあの人は
車掌の激しい声で目を覚ましたと言う
声の方を見ると
激しく怒鳴る車掌に年老いた老婆が東北なまりで何度も謝っていて
老婆の横には幼い女の子が今にも泣きそうな不安な顔で寄り添っていた
話の内容は老婆が指定席と知らずに座っていたから差額料金を払え
払えなければ到着後保安室に連行するというもの
老婆は駅に着いたら娘が迎えに来てるから娘に払ってもらうと説明したが
若い車掌は今払えなければ連行すると譲らない
見かねたあの人は若い車掌に言った
「あんたのお母さんがもしこんな風に困っていても、今と同じ事が言えるのか」と
それでも若い車掌は譲らない
あの人は「差額料金はいくらだ、払えばいいんだろ」と払ったそうだ
車掌は気まずそうに受け取りその場を去った
老婆は東北なまりで「ありがとうございました。
駅に着いたら娘が迎えに来てるのでお金を返します」と言ったそうだが
程なく終点の駅に着き、あの人は「好きでやった事だから気にしないでくれ」と言って
老婆に追いつかれぬよう足早に立ち去ったと言う
あの人の正義感(親切心)は目的を遂げるとそれで終了する
私もその日に聞いて以来忘れていたので
たぶん、あの人はこのことを忘れていたと思う
私の前で見せるあの人の顔はいつも天使(神様)のようだったが
出会った頃のあの人との会話では度々冷酷な悪魔の顔を覗かせていた
あの人の言った悪魔の言葉
「遊んで一番面白いのは人の心だよ」
私と出会ったのは、いくつもの裏切りが重なって
人を信じられなくなっていた時期だった
私に対しては初めから優しかったあの人が
私を心から信じてくれたのはいつからだったんだろう
| Home |