2010.09.30 時計
あの人は振り子の柱時計が好きだった
オークションで古い柱時計を手に入れて仕事場に掛けていた
4年前に中古住宅を購入して引っ越した際に、実家で動かなくなっていた柱時計を貰い受けわざわざ修理にだして居間の柱にかけた
その低い音が時にはテレビや電話の邪魔になる事もあったけど、懐かしい響きに今も癒されている
仕事場の柱時計は越してからもしばらくボンボン時を知らせていたが、ガラスが割れてしまったらしく新しい時計を購入した
形だけ振り子の電子オルゴール時計、隣の部屋で寝ていた私は毎晩その音を聞きながら眠りについてた
あの人が亡くなって眠れない夜が続いた時、ふと気づいた「オルゴールの音がしない」
その時計は光センサーが付いていて明かりがないと音がしなかった
あの人が毎晩明るくなるまで仕事をしていたから、私は今までその事に気づかずにいた
2010.09.30 やさしさ
あの人は出会ってから亡くなる瞬間まで優しかった
ずっと「優しい人」と思いながら一緒に過ごしてきたが
あの人のやさしさを本当にわかったのは亡くなった後だった
例えるならオーヘンリーの懐中時計の鎖と髪飾りの話のような一見無駄とも思える愛情
昔の私はこの話が大嫌いだったが、今の私にはお互いの気持ちを受け取った二人の喜びがよく理解できる
何年か前、年老いた老夫婦(ホームレスだったか車上生活者だったか)の妻がその過酷な生活から身体を壊し
夫はわずかに残った小銭で妻の好きだったあんパンを買ったが妻は口にする事もなく亡くなった事件があった
その事件をテレビで見た時、もっと早く何か方法はなかったのかとか、妻が気の毒だとか思ったが
今は夫の愛情を感じながら亡くなった妻は幸せだっただろうと思える
2010.09.30
あの人の声が好きだった
毎日当たり前に聞いていた声なのに、今はどうしても思い出せない
あの人の友人に数年前の野外ライブの時の録音が残っていたら探して欲しいと頼んだが
見つかる可能性は低い
同じように写真嫌いだったあの人の写真は極めて少ない
突然の事だったとはいえ、慰霊の写真は免許証のもので生前の面影すらなく手を合わせても全く感情移入出来ない